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夢を継ぐ者 [- DETERMINATION -]

■DISSIDIA FINAL FANTASY ■
   - DETERMINATION -
       夢を継ぐ者

クラウドは、ライフストリームの中で少女を見つけた。

彼女の力の暴走を落ち着かせるため、クラウドは剣を抜き、彼女と戦うことに……。

そして、彼女と交流するうちに、クラウドは気づいた。

コスモスの戦士として戦う自分は、他に大切な何かを失っていたことを。


- DETERMINATION -
夢を継ぐ者_



 調和の神、コスモスの弱った力では、世界を支え続けるには限界が近づいていた。コスモスに仕える戦士たちは、クリスタルを探す旅を続けていたが、それが何を意味するのかさえ分からないまま、己の使命を全うすることだけを信じて進んでいた。


 * * * * *


 「大丈夫か?」
 クラウドは、そう言ってティナに近づいた。その時は既に、彼女を苦しめていた「何か」の気配は消えていた。
 「どうして逃げなかったの…?」
 ライフストリームの光の中、クラウドはティナの瞳を見つめ返した。
 「……苦しそうなあんたを放っては行けない。かと言って、他に方法も見つからなかった」
 「もしかして……私の力を落ち着かせるために、闘ってくれたの……?」
 「悪かったな……先に言うべきだった。だが、まさかここまでとはな。素直に逃げるべきだったかもな」
 クラウドはティナと闘ったことに後悔は無かったが、彼女の強大な力にねじ伏せられそうになった時は、手に入れたクリスタルさえ意味をなさなくなってしまうという恐怖を感じていた。
 「ありがとう」
 しかし、彼女の口から出た言葉に、クラウドは少し驚いた。
 「礼を言われる資格は無い。あんたを救える確証は無かった。本当は、どうすればいいのか迷っていた……」
 彼女が「逃げて」と叫んだ時、クラウドは剣を抜いた。彼女を支配している「何か」を断ち切らなければ、永遠に彼女を救えることはないだろう。闘うことで彼女を救えるか分からなかったが、彼女を放って行く事は出来ない。暴走する力は、発散させる以外に方法は無いように思えた。もしここで自分が亡き者になったとしても、彼女を置いて逃げるよりは、ずっとましだと思っていた。
 「でも、助けられたのは本当のことだから……その気持ちだけは伝えたかったの」
 そう言うティナの顔を見て、クラウドは心から安堵した。彼女を救うことが出来たこと --- そして、迷っている自分でも後悔の無い選択肢を取れば、道が開けることもあるのだ、と。
 「迷いがあっても、出来ることはある、か……」

 クラウドは、ティナと一緒に居たオニオンナイトがケフカと共に消えてしまったという事情を聞き、ティナと行動を共にすることにした。急に一人になってしまって心細いだろうし、何より彼女を苦しめる「何か」が現れたら、再び守ってやらなければならないと思ったからだ。
 二人で旅を続けていると、ある時、ティナが一人で俯いているのを見つけた。彼女は、自分の力が怖いと言う。誰かを助けたくても、力が暴走したら、と思うと、とても怖いと。
 「誰にでも迷いはある。がむしゃらに進めるヤツなんて、ごく一部だ」
 クラウドは、ティナと行動を共にする前は、フリオニール、ティーダ、セシルと一緒だった。常に闘う意味を考えていたクラウドは、フリオニールの夢の話をティナに聞かせた。のばらの咲く世界、それがフリオニールの夢なのだ、と。
 「クラウドには、どんな夢があるの?」
 ティナに問われて、クラウドは目を伏せた。
 「俺は……失くしたんだ」
 「え?」
 強くなる事の意味なんて考えず、ただ空虚な自分を埋めるためだけに闘ってきた。
 「そういうあんたはどうなんだ?」
 ティナに問い返すと、彼女は一瞬だけ言葉を失ったが、すぐに首を振った。
 「私も……分からない」
 ティナは更に言葉を継いだ。今まで、未来のことなんて考えたことなかった、先のことなんて、ただ怖いだけのものだった、と。
 「……けど、今は……」
 そう言って、言葉を飲み込んだティナは、少し成長したように見えた。コスモスの戦士として戦っていた彼女は、確かに強かった。しかし同時に、とても不安定で、力の強弱をコントロールできないときもあった。そんな時は、決まって誰かが彼女を守った。
 「ねえ、同じ夢を見るのはどうかな?」
 ティナはクラウドを振り返って言った。クラウドはティナを見つめ返し、「同じ……?」と問い返す。
 「のばらの咲く世界か?」
 「うん……でも、そこには、のばらだけじゃない。きっと、いろんな花が咲いているんだと思う。私の好きな花も、あの子の好きな花も」
 そして、恐れるだけじゃない未来を、みんなと一緒に見てみたいんだ、と彼女は言った。飲み込んだ言葉は、このことだったのだろう。
 「あなたの好きな花だって、きっと、そこに……」
 --- 俺の……好きな花……?
 クラウドの脳裏に、かけがえのない人の笑顔が甦った。
 --- エアリス……。
 「クラウド、どうかした?」
 ティナに顔を覗き込まれ、クラウドは「いや、なんでもない」と答えた。
 「色々な花が咲く世界、か……そう簡単に叶う夢じゃない。けど、悪くないな」
 「うん」
 ティナが微笑んで頷いたとき、クラウドは彼女への想いを強く心に刻んだ。もう二度と、失くさないように。


 そう、エアリス。
 どうしてだろう。俺は、今まで君の名前を……。
 俺は、コスモスの戦士。
 でも、戦う意味を失くした。
 それは、どうしてだったか思い出せなかった。
 今なら分かる。
 君の名前も、心に刻んだ想いも……。
 そして君の花を
 世界中に咲かせるために……。

 「行こう……」

 エアリス……君の夢を、俺が追いかけてもいいかな……?
 

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